2冊ほど手記を読んでいます。下らない話が、スピリッツの江川達也氏の作を読んでいて
日露戦争当時の人物に興味を抱いていたことがきっかけでした。
有名な「坂の上の雲」は未読です。僕の読書傾向は相変わらず広く浅く穴ぼこだらけ。
今回も近くのバーで「坂の上の雲」の横にあったこの本に手を出した。
右傾化の世の中で国民国家形成の時代を振り返るブームに乗っているだけの
情けない凡々たる有様ですが、どうも時代小説と申しましょうか、
近代のかような読物は過度にドラマチックな先入観がありました。
この手記は、明治期から大恐慌まで陸軍で諜報活動に従事していた
石光真清が残した細やかな記録をその子息が取りまとめたものなのですが、
なんというか、非常に淡々と日々が語られており、妙なヒロイズムがない。
石光の人生は結局は揺れ動く国政や軍部に振り回され、
失敗を繰り返して終わるのですが、この顛末も悲劇というか、
一人の明治人の記録に終始して淡々と語られています。
淡々としてるからこそ、文面からは当時の大陸と日本の関係、
列強との油断ならない緊張感が、現場レポートの様に良く伝わってくる。
ここで何を思い出すかというと、イラク。
政府が転覆し、諸外国が利権確保や在留自国人保護の目的で出兵し、
しのぎあう。結局紛争のさなかにおける人間の行動って
100年たっても変わらないものですね。